Updated 2021.02.08
《 無添加天然醸造 宮本みそ店 》代表 | 宮本 晃裕(みやもと あきひろ)
都心と繋がる魚津の味噌屋の未来予想図
#手作業 #無添加味噌 #飲む糀
Profile|Akihiro Miyamoto
祖父母が始めた創業60年の味噌屋の2代目。糀(こうじ)の原料となる米は自ら育て、昔ながらの手作業で仕込む。2010年に宮本みそ店をオープンし、委託販売だけでなく味噌や糀、その他加工品の小売りを始めた。 2011年に味噌ソムリエに認定。
宮本みそ店は、宮本さんの祖父母が1957年に自宅で味噌づくりの委託加工業を始めて約60年。創業当時からの製法を今も変わらず受け継いでいます。アルコールや添加物を一切使わず、すべての工程を丁寧な手作業で仕込むことで、体にやさしい無添加・天然醸造の味噌が出来上がります。
20代前半、将来に悩んでいた時に観て感銘を受けたのが、テレビドラマ「北の国から」です。祖父母の生き方と重ね合わせ、「2人の味噌の味を残したい」という強い思いで、家族の反対を押し切って受け継ぐことを決めました。
家業を手伝う中で祖父母のやり方を覚え、仕事を少しずつ任されるように。
そして2010年、29歳の時に自宅の工房をリニューアル。販売スペースを作り、委託販売だけでなく、小売りもできる店をオープンしました。
2011年には味噌ソムリエに認定され、2012年からは東京のマルシェに出店するなど、自分のやり方で販路を広げています。
宮本さんは幼い頃から、昔ながらの味噌づくりに励む祖父母の背中を見て育ちました。祖父母はお客さんの好みに応じて味を調整するなど、きめ細やかな心遣いで味噌を作り続けていました。
祖父母から受け継いだのは、「味噌づくり」と「味」に加え、実直な「人としての考え方の基本」です。
手作業にこだわるのは、祖母の教えから。
「目的は、きちんとした良い味噌を作ること。機械でいかに楽をするかを考えてブレたくない」
という信念のもとで取り組んでいます。
味噌の品質を決めるのは、原料である米糀と大豆です。宮本さんは「農業があっての味噌づくり。地元の米と大豆で作りたい」と考え、地元産にこだわってきました。
そのこだわりが高じて自分で米作りをするまでになり、味噌には地元の田んぼで育てたコシヒカリ1等米を使用。お店のリニューアルと同時に減農薬米の栽培も始めました。
「原料から作る大変さも経験し、想いの詰まった商品をお客さんに届けたいんです。本当は大豆も作りたいけど、自分たちで全部のことはできないので、信頼できる農家さんから魚津産のエンレイ豆を仕入れています。」
最近は、畑で野菜や大豆、そばの栽培を始めました。今度、そばで糀を作る“そば味噌”も作ってみようと考えているそうです。
味噌の味を決めるのは、原料以外に熟成も重要です。
「冬は雪が降り、夏は暑くお盆が過ぎると涼しくなる。そんな四季がはっきりしていることが味噌の熟成に良い影響を与え、美味しくなります。米や大豆の良し悪しよりもさらに、熟成の方が大事だと思っています。」
味噌を仕込む時期は、毎年冬の寒い時期。近年は温暖化により暑い期間が長くなりました。そのため発酵が進んで熟成が早くなり、味噌の色が以前に比べ濃くなっています。
色の濃い味噌を敬遠する人もいますが、これを逆手に取り、何年も寝かせた「熟成」味噌の販売も始めました。
経験を重ねた宮本さんが今言えるのは、
「自然に影響される農産物だから、味噌の出来は毎年異なり、味も毎回違うんです」
ということ。これを理解し、ファンになってくれるお客さんが増えました。
「うちで1番熟成が進んだ味噌は9年もの。一般受けはしないですが、料理人の方が好む複雑な味わいの味噌になっています。」
製造・販売のほかに、自分で手作りしたい人のための味噌づくり教室も開催してきました。
オープンから10年経った2020年はコロナの影響で来店客が減った一方で、免疫力を上げる発酵食品の力が見直されているのか、自粛中にネット販売が増加。「家で作りたいから材料だけ送ってほしい」という依頼も多かったそうです。
「感染予防に消毒は大切ですが、手にいる常在菌も味噌には必要なものです。あんまり滅菌ばかりも良くない。自然といつも向き合っていると得るものが多いです。味噌にしても、白や緑などの明らかなカビでなければ色が黒い部分は取らなくてもよくて、『カビは表面に絶対に生えるので、自分で判断できるようになりましょう』と話しています。何をやるにしても、知っているのと知らないのとでは違いますね。」
自粛期間中に初めて挑戦したのが「オンライン味噌づくり」。チームで最大100人を相手に、味噌蔵からの配信や説明を行い、好評を博しました。
「チームでやればほかの業種でも、いろんなやり方ができますね。今後はリアルとオンライン、両方を併用してやっていければいいと思っています。」
大きな転機となったのは2012年の東京表参道で開かれる人気のマルシェ「ファーマーズマーケット」への出店。これを機に、人脈や販路は一気に広がり、商品展開から活動内容、ブランディングに至るまでこれまで以上に「宮本みそ」が確かなカタチを成していきます。
「都会は温かい人が多かったです。お客さんの声も直接聞けるし、ファーマーズマーケットでは様々な業種の人から刺激を受けました。ここで出会ったデザイナーさんは今のホームページや商品ラベル・パッケージなどを手掛けてくれていますし、コミュニティメディアを運営している若い女性のアイディアでピンク色の甘酒を開発して、雑誌やテレビなどのメディアにもたくさん出してもらうなど、人との出会いで運命が変わりました。
次は、ここでできた全国的なつながりを、大勢の人たちに波及していきたいです。」
そんな想いを抱いた宮本さんは、魚津市内の空き家を手に入れ、“何かが生まれる場づくり”の構想を膨らませています。
「次の10年は、味噌をきちんと残していくためのアプローチとして、新しい取り組みにもチャレンジしたいと思っています。ずっと変わり続けないと事業は続いていかないので、違うこともやっていくことが必要です。そのために、もっと広い範囲で地域の人たちのために何かできることがないかを考えました。」
宮本さんは、地元地域の空き家を活用して県外から来られた人をもてなす場所を作り、販売スペースを移動するほか、発酵食品や地元の農産物、魚津の魚、山菜など旬のものを使って自分たちで作ったものをみんなで食べる飲食スペースを設置することや、オンライン企画、ワークショップなどを計画しています。
もちろん、ベースにあるのは味噌づくり。田植えから大豆の栽培、収穫、味噌づくり、味噌が完成し、調理して食べるところまで、1年半をかけてのワークショップも思案しています。
「地元の人や学生にも好きなように利用してもらいたいです。外国人の方にも地元のじいちゃん・ばあちゃんと語ってもらうことで、小さな波紋が大きな波紋となって魚津に良い影響を与えられれば、楽しい街になるなと。最初からこんなことを考えていたわけではありません。自分がしたいことを突き詰めていくことで、結果的に地域のためになればいいと思っています。都会の人も含めてみんなで話しながら、刺激し合って事業性を持たせ、少しずつ継続できるようにしていきたいと考えています。」
米の生産から味噌や甘酒の製造、販売と、6次産業を自身の手で実践している宮本さん。
今後、味噌づくりという軸を中心に夢が広がり続け、その渦に多くの人を巻き込んで魚津全体に広がっていきそうです。
1回で研ぐ米は60kg。腰が痛くなる重労働。糀を作る際には数人で米を混ぜながら米粒の表面に薄く細かい傷を満遍なくつけ、そこに麹菌を定着させやすくする。
機械だと混ぜムラや温度ムラが起きて弱い糀になってしまうこともあるが、手で丁寧に混ぜれば酵素が強く質の良い糀ができる。
近年、糀の質の良し悪しが数値化できるように。一般的な糀に比べ宮本みそ店の糀は約3倍以上の数値を示し、質の高さがそのまま味噌の美味さに現れる。
無添加天然醸造 宮本みそ店 代表 宮本 晃裕
場所 | 富山県魚津市宮津1187 |
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TEL/FAX | TEL 0765-32-4156 FAX 0765-32-4158 |
about | SNSでイベント案内や活動、日々の思うことなどを発信中。 商品購入は、宮本みそ店ホームページや、魚津市内のスーパー「原信」など。 メディアブランド「NEXTWEEKEND」とのコラボレーションで生まれたピンク色の甘酒は「NEXTWEEKEND STORE」でも購入可能。 https://nextweekendstore.jp |
Web/SNS |
http://miyamotomiso.jp/
https://www.facebook.com/miyamotomisoten/ https://twitter.com/miyamotomiso https://www.instagram.com/miyamotomiso/ |
宮本みそ店のスタッフの祖父母は、80代後半の今も魚津で農業を続け、サツマイモやジャガイモを生産販売されています。そこにあるのは、「待ってくれているお客さんのために、働けるうちはずっとやる」というシンプルな考え方。宮本さんは自身の祖父母と重ね合わせ、見習いたいと思っているそうです。
ところで、宮本みそ店さんには9年物の「熟成味噌」があるほどなので、味噌の賞味期限が気になりませんか? 基本的に賞味期限は無いものの、販売時には表示が義務付けられているため、袋に入れてからは4カ月と設定してあるそうです。
味噌の量り売りもやっていて、「容器を持って行くとサービスがある」とのこと。これは、容器持参で行くしかありませんね!
取材・ライター 古野 知晴 (VoiceFull代表、キャスター)
撮影 鬼塚 仁奈(tete studio works)
取材日 2020.11
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