home UO! topics 働く女性たちが暮らしやすく、もっと働きやすく- 起業家ママは高みを目指す –

  
  

Updated 2024.10.21

《 マカロン専門店|ココマカロン 》株式会社ココハレ 代表取締役 | 大島 恵(おおしま めぐみ)


働く女性たちが暮らしやすく、もっと働きやすく
- 起業家ママは高みを目指す -


#地方起業家ママ  #ココマカロン #女性の働き方

働く女性たちが暮らしやすく、もっと働きやすく- 起業家ママは高みを目指す –

Profile|Megumi Oshima

茨城県出身。神奈川県の乳業メーカーでフードコーディネーターとして働いていた際に営業職だったご主人と出会い、結婚。ご主人の故郷である魚津市に家族で移住し、2017年にオーダーメイドのマカロン専門店《ココマカロン》をオープン。ネット販売から徐々に規模を拡大し、2024年6月に法人化。8人のスタッフを抱える。一方で8歳と6歳(年長)の息子のママであり、フリーランス(個人事業主)のママ同士がタッグを組む《ココママ》の代表としても活動している。

   

想いを乗せて届けるマカロン

 魚津市役所のすぐそばにあるイラスト入りのマカロン専門店「ココマカロン」。
“世界にたったひとつ” を掲げ、オーダーメイドでお客様の想いをマカロンにアイシング[注]で描いてくれる、全国でも珍しいお店です。地元でもすっかり人気となったこのお店が、オープンから7年目の2024年6月「ココハレ株式会社」として新たなスタートを切りました。
[注]アイシング:粉砂糖に水分を加えて作るペースト状のクリームのこと。

店内には、動物の顔や花、虹などの細やかなイラストが描かれた色とりどりのマカロンが並ぶ。

 1つ1つ手作りで仕上げられたマカロンは、華やかでかわいらしい見た目と美味しさから、選ぶ楽しみと贈る楽しみ、食べる楽しみがあります。年間を通して全国からネット注文が入り、月に6、7千個も販売するそう。

「オーダーに添えられたメッセージを見て、お客様の気持ちを汲んで、心を込めて丁寧に描いています。贈る方の想いをマカロンで代弁しているようで、ありがたいですね。常に同じ作業ではなく、『この人はこういう想いがある』『この人はペットを亡くした友人を慰めたいんだな』と感じながら、贈る人の想いを届けられるように心がけています」

 そう話すのは、ココマカロンのオーナーでありココハレ株式会社 代表取締役の大島恵さん。お客様一人ひとりの要望に寄り添い、時にはメッセージ以上の溢れる想いを汲み取りながら、小さなマカロンに乗せています。オープン以来、お客様に誠実で丁寧な対応を積み重ねてきた大島さんの姿勢が、全国から注文が入る人気店となった理由の1つだと言えます。

定番デザインへの文字入れはもちろん、キャラクターや似顔絵など、様々なオーダーに、高いクオリティーで応えてくれる。

「ホワイトデーの時期には息子さんに代わってお母さんが買われるとか、中小企業の社長様から数十個の注文をいただくこともあります。誕生日にはお友達や奥さん、お子さん、お孫さんへのプレゼントが多く、『お誕生日おめでとう、○○ちゃん 3歳』などのメッセージを添えられます。マカロンに名前が入ることが喜ばれるのだと思います」

 マカロンのイラストは季節ごとのバリエーションが豊か。オーダーにはできる限り応えてくれるため、最近は推し活やペットの写真に似せて描いてほしいという注文、喜寿や米寿のお祝いに贈る方も多いそうです。

小さく始め、ニーズを見越して規模を拡大

 イラスト入りマカロンのアイデアは、大島さんが東京でフードコーディネーターの仕事をしていた時に生まれました。

「仕事でマカロンを作る機会があり、余ったチョコペンでニコちゃんマークのイラストを描いたところ、友達から『すっごくかわいい。(人気が出て)これでビルが建てられる』と言われたので、調子にのったんです(笑)。マカロンにビジネスとしての可能性を感じ、25歳の時には一人でフランスのパリに行っていろんなマカロンを食べ歩いたり、現地でマカロンを作っている日本人パティシエに話を聞いたりしたこともあります。それ以来、趣味でマカロンを作っていましたが、東京はテナント料も高く、商売にするなど夢のまた夢でした」

 その後、大島さんは29歳で結婚。長男が1歳のとき、ご主人のUターンを機に神奈川県から魚津市へ移住したことがきっかけとなり、都会では諦めていた長年の夢が叶うこととなりました。2017年6月、家を建てる際、自宅の一室に小さな工房を作って始めたのが、ココマカロンのスタートです。当初はネットの予約販売のみでした。

2017年、小さな作業スペースでスタート。一度聞いたら誰でもすぐに覚えられるように「ココマカロン」という店名に。

「『マカロンをやってみようかな』みたいな軽い気持ちだったので、失敗していつ辞めてもいいように、初期費用が少ない状態で小さくスタートしたんです。お菓子作りが好きというより、イラスト入りマカロンに可能性を感じていたんです。『これならビジネスになる!』と。怖いもの知らずですよね(笑)」

 最初は長男をおんぶしてマカロンを作る日々。知らない土地での子育てとともに歩き始めた「ココマカロン」は、当然ながら平坦な道のりではありませんでした。

「2歳くらいの時が1番辛かったです。重くなってくるし、おんぶしてなんて仕事できないですよ。めちゃくちゃ無理していて、それこそ夜中にマカロンを焼いているような状態で、常に寝不足でしたね」

そんな中でも売れ行きは好調。2019年には対面販売ができる店舗を増築し、そのタイミングで初めてスタッフを1人雇用しました。

店舗を増築した2019年に初めてスタッフを雇用し、2人体制になったココマカロン。この頃から対面での販売もスタート。

「最初は人件費を賄うハードルがすごく高かったです。店舗を大きくする・人を増やすには、やっぱり一歩が大きいじゃないですか。でもマカロンの需要はあるし、作れる量が倍以上になればまだまだ売れると確信していたので、少しずつ拡大し、スタッフを増やしていきました」

 コロナ禍にあってもネット販売の売れ行きは落ちることなく、順調に事業拡大を続け、2021年に現在の店舗をオープン。今では大島さん以外に8人のスタッフがいます。スタッフは子育て中のママを中心にすべて女性で、それぞれの状況に合わせて週3~5日間の勤務。子どもの発熱や行事などが重なると人手が足りなくなることもあるものの、みんなで協力し合ってシフトを組んでいます。子育て中の時短勤務や週数日勤務など、個人の要望に応じた働き方ができるように環境を整えた企業の先駆けとも言えます。

「風通しが良い、意見を言いやすい環境を心がけていて、スタッフから出た意見は些細なことでも『じゃあやってみよう』と積極的に取り入れるようにしています。時には仕事をセーブして、みんなでランチに行ったりもしています」

そんな和気あいあいとした雰囲気が好循環を生み、大島さんはもちろん、スタッフのアイデアから、プリンやフレーバーマカロン、リッチシリーズなどの新商品が次々に生まれています。

「今では私が打ち合わせや事務作業をしたり、東京出張へ4日間行ったりしても店が回るのがありがたいです」
大島さんの仕事に対する姿勢がスタッフみんなに共有され、それがそのままココマカロンの唯一性に。

同じ悩みを抱えるフリーランスのママを応援する「ココママ」

 さて、時期は少し遡ります。
 大島さんが多忙を極める日々を過ごしていた2018年、「ココマカロン」とは別に、もう1つの活動を立ち上げる機会が訪れました。フリーランス(個人事業主)のママ同士が繋がるきっかけとなった「ココママ」の誕生です。次男の誕生からわずか3か月のことでした。ココマカロンの売り上げは順調だったものの、経営者であると同時に2人の子育て中のママ。仕事を抱えながら育児にも翻弄され、時に孤独感や悩みを一人で抱え込むこともあったそうです。そんな個人事業主のママが自分の周囲にもたくさんいることに気付き、『同じように頑張るママと協力しあえたら』と始めたのが「ココママ」の活動でした。

ココママでは子育てをしながら孤軍奮闘していたママたちと繋がり、その後さまざまな活動を展開。
(画像は2022年「フラットカーニバル」を開催した時のもの)

「自分も含めて、子育てってすごく大変だけど社会には絶対必要なことじゃないですか。でも、まだまだ厳しい環境にある。だから小さい子を育てているママが働きやすい環境を作りたいと思いました。
 ココママにはカメラマンやカフェの経営者、フラダンスのダンサーなど6人のメンバーがいて、少数精鋭がいろんな企画を立ち上げて運営しています。富山県内でも、特に魚津市は『若い女性が県外に出て行ったら戻ってこない』と言われていたので、女性が元気でいる町になれば『戻ってきたい』『ここで子育てがしたい』という人が増えると思いました。他の市町村から『魚津市は女性の元気がいい』と言われるのは嬉しいですね」

 ココママでは、市内で起業している子育て中のママたちを巻き込んだ「マルシェ」をはじめ、講師を招いた女性向けのセミナーやオンラインでフリーランスママの座談会も開催。「子育てママたちを応援したい」という想いは、頼もしい仲間と出会うことで、いつしか育児や、女性活動躍進をも取り巻く地域課題への取り組みにもなっていました。

都会と魚津をつなぐ「ファミリーワーケーション」

 大島さんは、子育て中のママの働き方に対する課題について、さらに広く目を向けるようになっていきます。
2022年9月からココママの活動の一環で旅行会社とタッグを組み、子どものいる都会の家族を対象にした「ファミリーワーケーション」というプログラムの提供をスタート。「ファミリーワーケーション」とは、バケーション(=旅行休暇)とワーク(=仕事)を組み合わせたもの。自身の神奈川県での子育て経験を思い返し、魚津市での伸び伸びとした子育てを都会の家族に体験してほしいと企画しました。地元の保育園にワーケーションで訪れる子どもの受け入れをお願いしたり、ココママのメンバーと家族ぐるみの交流を企画したり、地道に準備を進め、実現したのです。

大島さんの「働くママへの想い」は富山県を飛び出し都会のママたちにも届いています|https://cocomama-toyama.com/

「ココママのホームページを見て、富山に縁もゆかりもないご家族が来てくれて。子どもは地元の保育園に通えるのがメリットの一つなので、保育園のお子さん連れのご家族が多いですが、夏休みだと小学生連れのお母さんが仕事をしながら参加されることもあります。
 魚津での子育てって本当にすごいと思うんです。道路が広く、交通量が少ないから子どもをある程度伸び伸びと歩かせられるし、公園がきれいで広く、子育て支援センターの先生はいつも笑顔で迎えてくれます。私が都会で子育てをしていた頃は、いろんなことが抽選・予約で子育ては戦いでした。道路は本当に危ないし、公園にも子どもがいっぱいいて、子どもが生きにくい・暮らしにくいところだと感じていました」

 大島さんは、富山や魚津のファンをつくろうという想いで動いています。こうした活動を通して、魚津のママたちと都会のママたちとの交流も生まれました。大島さんがフリーランスのママたちと築いた繋がりが、さらに魚津の関係人口を増やすという広がりを見せているのです。

「魚津が人気なのは、やっぱり『海』が1つキーワードなのかもしれません。田舎や山は日本全国たくさんあるけれど、海が目の前にあるのは珍しく、特別感や惹かれるものがあるのだと思います。子どもの頃の楽しい思い出は、大人になっても思い出すもの。また来てくれたり、誰かに発信してくれたりしたら、それだけで十分です」

ここからの「ココハレ」

 全国の人へ想いを届ける「ココマカロン」。そして仲間とともに、自分ごとでもある地域課題に取り組む「ココママ」。この2つは、いつも「誰かのより良い時間のために」という大島さんの願いで繋がっています。フードコーディネーターとしてのスキルや都会での子育て経験を強みに、大島さんならではの嗅覚とバイタリティで今があります。そんな大島さんの活動をオープン当初から応援し、励みになっているのが、ご主人の存在。優しくも厳しく、必要な時に叱咤激励してくれるそうです。

「夫は一番の応援者です。ムチで叩くかのように応援してくれます(笑)。経営って大変ですよね。現在の店舗を建てて3年目ですが、1年目で売上の目標を達成してしまったんですよ。そうすると、2年目に目標を見失い、現状維持しようとしていたんですね。そしたら夫から『現状維持は後退だ』って言われたんです。商売していたら現状維持ほど大変なものはないから悔しかったけど、案の定、その年はほとんど伸びなかったんですね。その時、やっぱり現状に満足していたら現状維持も難しいのかなと思って。翌年は高みを目指して頑張っていたら、前年度の売上から130%アップしました」

それが法人化を決断するきっかけとなりました。2024年1月には社会保険に入り、4月に2人を正社員にして、6月に菓子製造部門を法人化。店名はココマカロンのままで、社名はココハレ株式会社、大島さんは経営者として次の一歩を踏み出しました。

「法人化したのは、会社としての信用度を上げるためやスタッフの待遇改善、税金のこともあります。今後は安定した注文確保のためにBtoBにも力を入れようと思っています」

 ここまで全力で走り続けてきた大島さん。その一方で、時折、立ち止まって考えることも。

「ふと、一人でやっていた方が楽だったんじゃないかと思う時もあります。人を雇用すると、もう後には引けないじゃないですか。なので、もうちょっと会社を大きくしたい気持ちと、程よくやっていった方がいいんじゃないかという気持ちの狭間で揺れることもありますね(笑)」

そう言いながらも、将来的にはスタッフのママたちがもっと働きやすくなるよう、店舗の2階に託児スペースを作ることなども検討中。多様な働き方をするママや女性たちがもっと暮らしやすく、もっと働きやすくなることを目指して、今後も何ができるかを模索しています。

「ママって一人で活動するより、みんなで力を合わせることで、もっと高めて生きていけるものだと思っています」

子育てと仕事の両立を自身が体現しつつ、どこまでも、働くママはもちろん、様々なライフスタイルの女性たちのために。そんな大島さんに惹かれた仲間たちと共に、ココマカロンとココママの活動が継続していきます。

実は大島さん…

「ココママ」の由来は?

「ココママ」の名前の由来は、「ココマカロン」の店名と子どもの「子」、円を描く「弧」を掛けたのだそう。ママたちがみんなで円を描くように力を合わせることで、もっと可能性が広がるのだと自信と確信を持って語る大島さん。そして多忙な働くママを持つ小さな子どもたちもまた、時に寂しい気持ちを抱えているのはいつの時代も同じ。それがママを困らせることもあるだろう。そんな時、たくさんのママたちの「手」がつないだ優しい「円」は、きっと小さな誰かの孤独も救ってくれるに違いないのだ。

日本酒大好き!

甘いマカロン作りが生業だが、実は自他ともに認める無類のお酒好きで、ウイスキー以外はなんでもござれとのこと。お子さんが小さいうちはなかなか飲みに出ることも叶わないので、今はもっぱら友人たちと持ち寄って家飲みを楽しんでいるのだそう。
「いやもう日本酒大好きなんで。本当に日本酒サークル立ち上げたくて。すっごいお酒好きなんですよ〜」
これまでも、有言実行で何事にも挑戦してきた大島さん。これは近い将来、また新たな活動を立ち上げそうな予感が…(笑)

働きたいママの働く環境とは

雑談の流れで「もう1人考えている?」という話題になり「それは常に悩みですね」と答えた大島さん。経営者という立場はもちろん、義両親の高齢化や土日保育の受け入れ条件など、産みたくても躊躇する子育て環境が容易に並べられる。そんな会話の中で飛び出した大島さんらしい言葉が印象的だった。「もう、ベビーシッター専任スタッフを雇うのもひとつですけどね…。あっ!そうしようかな!病児保育もできます、みたいな。そうですね、もしもっと頑張って会社を大きくしたら、絶対託児スペース作りますね!そしたらね、もっとママが働ける」

ココマカロンに行きたい!
スポット情報
最新の販売情報はInstagramやfacebookでチェック! (※情報は2024.10月現在)
ココマカロンに行きたい!
ネット販売とは別に、金曜・土曜の11時〜17時なら店頭での購入が可能だ。店頭では、通常のマカロンのほかにケーキマカロンや期間限定テイストのレアマカロン、アイスマカロン(夏季限定)など、ネットでは手に入らない商品が並ぶことも。
また、イラストのオーダーは割り増し料金で予約を受け付けてくれる。家族やアイドルの似顔絵、アニメのキャラクター、K-POPのメンバーカラーやスポーツチームメンバーのユニフォーム柄などのほかに、喜寿や米寿のお祝い、香典返し、法事の手土産などの様々な要望に対応してくれる。あなたも大切な誰かへ「世界にたったひとつ」を贈ってみては?

株式会社ココハレ 代表取締役 | 大島 恵(おおしま めぐみ)

場所 富山県魚津市釈迦堂1-7-13
TEL/FAX TEL 070.8401.6011
about 【ココマカロンの営業案内】
金・土曜日 店頭(小売)販売 11:00〜17:00
それ以外の日はご予約受け渡しのみ。
DMや電話からご予約できます。
日・月曜日定休
(2024.10月現在)
Web/SNS 【ココマカロン】
https://cocomacaron.thebase.in/

https://www.instagram.com/cocomacaron25/

【ココママ】
https://cocomama-toyama.com/

https://www.instagram.com/cocomama252525/

本文ではカットしましたが、大島さんは「魚津三太郎塾」を次男の妊娠中に受講し、塾の仲間の紹介で2017年11月に初めてマルシェ「姫フェス(上市町)」に出店。私の所属する市姫東雲会が実行委員会だったため、その時初めて大島さんと出会いました。初の対面販売にも関わらず、用意されたマカロン250個は早々に完売。今回のインタビューで、大島さんが「ありがたいことに、マルシェで需要があると分かりました。それを機に販路を少しずつ広げ、自分のお店でも店頭販売したくなったんです」と言われたのが嬉しかったです。子育て中の目の回るような毎日でも諦めず、常に事業を拡大されてきた大島さんの強い意志と目標を実現する力を感じます。夢を実現することは生半可な覚悟ではできない。悩み・迷いながらも、前へ踏み出す一歩がやがて大きな道のりになる。大島さんの生き方が、それを体現されていると感じました。

取材・ライター 古野 知晴 (VoiceFull代表、キャスター)
撮影      鬼塚 仁奈(tete studio works)
取材日     2024.4.19

Copyright © 2020 Uozu Tourism Association Co.,Ltd All rights reserved.